24歳だった、1965年、全財産80万円をもって欧州を旅しました。
大阪商人だった祖母に言われたのが「ためて喜ぶな。自分の体に蓄えておけ」。

  ユースホステルに泊まり一日5ドルで8か月、西洋の建築を見て回りました。
貧乏旅行だけではなく、時には一流の建築を体験するため一流のホテルにも泊まりました。

  僕は大阪生まれの大阪育ち。大阪人はお金にがめつい。
厳しいと言われるが、丁寧に使うんだと思います。非常に大切なものと考えて使うんです。

  僕の事業所では、25人の所員に紙も鉛筆もコンピューターも自分で用意させます。
自分のものなら丁寧に使う。ケチだからではありません。

  建築家は創造的な仕事と思われるが、彫刻や絵画と違い施主がいます。
我々はいつも他人のお金で勝負しているんです。

  日常生活で金銭感覚が抜ける人では、他人のお金を扱えません。
そのためには、日常を大きくしすぎないのがいい。

  偉い人に会ったり大きい仕事を受けるようになったけれど、生活は昔と同じ。
別荘なんて気持ち悪い。国内ではクレジットカードは使わない。ローンも組まない。

  事務所の決済も現金です。大切なのは自分のことは自分で責任を持ち、分相応に暮らすこと。

  (  日経  私の履歴書 より 安藤忠雄  建築家  )