念願がかなって松本歯科大に合格。高校まではろう学校にいたため。
難聴ではない友人に囲まれる生活は初めてだった。

  「同級生も先生も当初はどう扱っていいかお互いとまどっていた」
思ってもいなかった「話し言葉」の壁にも突き当たった。

  大学はタブレットで授業内容を字幕で表示するシステムを導入。
ただ講義の重要部分に差し掛かって先生が声のトーンを強めても、字幕だけでは伝わらないこともあった。

  「世の中の人が思った以上に音で雰囲気を判断していたことに驚いた。
共有できない世界があった」。

  学習ポイントが他の人とズレていたことに後から気付き、悔しさやさみしさを感じたこともあったが。
コミュニケーションの可能性を見出したのもこの頃だった。

  自ら筆談で語りかけ、仲良くなるにつれて手話に興味を持ち、学んでくれる友人が出てきた。
大学には留学生も多く、異国の言語に悩む姿は自分と重なった。

  ( 日経  Answers より 障害乗り越え 歯科医の道開く )