2022年、京都市の出版社、琥珀書房から上海文学が復刻された。
同誌は日本占領下の1943~45年に上海で刊行された日本語文学雑誌。

 創刊号に掲載された月山雅の短編小説「支那街に育つ」は、現地在住の日本人家族の暮らしぶりをつづる。
中国・上海に移り住んで1年半余り、6歳の娘は向かいに住む現地民の子と大の仲良しになり。

   毎日ままごとをして遊んでいた。
仲睦まじい2人をほほえましく見守る父親だが、娘が向かいの子に教わったのだろう中国語を口にすると。

   「なんだねその言葉は」と娘の頬をひねり上げて泣かせてしまう。
表面上は「対等な存在だ「と言いながら、ふとした瞬間に噴出する隣人への差別意識。

   そんな情景は、現代の日本社会にも通じる。

       (  日経  文化 より  「文学史の定説覆す真価」 )