だが、旅の面白さは、少なくとも町歩きの面白さは、単に目的地に早く着くだけでな。
汗をかいたり、道に迷ったり、とんでもないところに出てしまったりといった過程の中にあるものなのだ。

   そうしたことによって、道を教えてくれる土地の人と触れ合ったり。
思いもかけない土地や建物に遭遇したりする。

   もしかしたら、グラブは旅の強い見方であると同時に、敵でもあるのではないか・・・。
こんな話を、ある酒席でしたことがあった。

   すると、そこにいて、直後にタイのバンコクに行く用事があったという若い会社員が、帰ってきて。
グラブは本当に便利でしたと言い、こう付け加えた。「まるでどこでもドアでした」。

   私は、言い得て妙だと思った。『ドラえもん』に出てくる「どこでもドア」は。
そのドアを開けて足を踏み入れるとすでに目的地についているという「ひみつ道具」のすげれ物だ。

   グラブも、滑り込んで来た車のドアが開くと、乗り込むだけで目的地まで連れていってくれる。
まさに「どこでもドア」である。だが、そこには「過程」という大事なものが存在んしない。

       ( 日経  文化 より 「敵か、味方か」 )