技術者としてのキャリアで真っ先に思い出すのは入社して初めて配属された現場だ。
配属先である電機メーカーの研究所が完成する直前、仮設の足場を解体したら。
外壁に吹き付けた塗装が波打っていた。

  視察に来た支店の部長は「こんなのうちの仕事じゃない」と一括し、作業をやり直しさせた。
「出来栄えや品質に対して謙虚にならないといけないと勉強させられた」。

約20年に及ぶ横浜支店勤めでは、ビルや学校の工事など、技術者としてあらゆる経験を積んだ。
「現場経験を重ねるほど、失敗も含めて発見がある」。

  教科書に書かれていることと現場で実際に起こること。
発注先の職人らが手掛けてくれる仕事の内容が、徐々に結びついてきた。

 

     (  日経  Mystory より  井上和幸  清水建設社長 )