信州の田舎町で静かに暮らし、70歳を過ぎてふと気づいてみると。
おなじ病院で働いていた先輩医師たちはほとんど逝去しておられる。
国際学会出席中の心臓発作による急逝、進行の速い癌、長い闘病の末の肺炎や認知症の果ての老衰。

  大いに嫌われ、ちょっと好かれ、人の生死に深く介入する医業の現場で。
むき出しの感情をやり取りした先輩医師たち。
ときに想い起こす彼らの面影は一様に笑顔で、次はおまえの番で死に方は選べんぞ、とおっしゃる。
(  日経分化 より   南木 佳士  )