早石研の名物として語り継がれていくのが、毎日昼休みに開かれるランチセミナーだ。
教授、助教授、助手や大学院生ら数十人が集い、1本の論文を徹底議論する。

 毎回、1人の発表者が「面白い」と思う英語の論文を紹介し「本当に面白いか」について意見を交わし合う。
発表者はそりゃ大変。「面白い」というのが実はくせものである。

  なぜ面白いかを伝えるには、参考文献だけではなく関連分野に関する「面白くない」論文も目を通し。
つけ入る隙を与えないよう、理論武装しておく。

  質問攻めにあい「論文にこう書いてあります」と答えようものなら、こんな反論が返ってくる。

 「ほんまか?書いてあるからと言って、それが証拠になるんか」。
こうむちゃぶりしていたのが助手、助教授を務めた西塚泰美先生だった。

  研究者たるもの、書いてあることを鵜呑みにするものではない、と伝えたかったのであろう。

     (  日経  私の履歴書 より 本庶 佑  京都大学がん免疫 総合研究センター長  )