6対5で日本の勝ち。そんな1行では、4時間近い試合のうねりはちょっと伝わらない。
録画の倍速鑑賞でも難しそうだ。九回裏に逆転勝利を決める1本を放ったのは。
最近いまひとつ不振とされてきた選手である。
映画や芝居の脚本なら「こんな展開は都合が良すぎる」と没にされるのではないか。それほど劇的だった。

  良い試合は良い対戦相手がいて成立する。
メキシコ代表には、ふだんはお隣の大国、米国でプレーする選手が多い。
10代の頃に父を亡くしキューバから亡命したメンバーもいる。
さまざまな背景や願いを背負う真剣勝負。メキシコ代表の監督が日本代表を賞賛しつつ。
「野球が今夜の勝利者だ」と語ったのもわかる気がする。
( 日経  春秋より  )