思わず、かわいそうに、と呟いてしまう。すると係の方は、大丈夫です!
このお猿さんは400年、この状態のまま水に落ちずに、耐えています!と笑っておしゃった。

  つられて大笑いしながら、その時、そうか、猿の憧れは永遠になったんだなあ、と思った。
結果と、過程にある瞬間は、存在的な価値としては同じなのかもしれない。
うっかり、正しい教訓とは逆のものを受け取ってしまった。

  子どもという水の月に憧れる私もまた、ここに、しっかり存在している。
もしも。不妊治療が成功しないまま貯金を使い切ってしまっても、よし。

  また、後でこれだけ望んでいた子育ての日々に後悔し、盛大に弱音を吐いたとしても、よし。
どの私も、いてよし。大切なのは結果に「納得すること」だけだ。

  そのために、不確定な未来に惑うて放してしまっていた舵を握りなおそうと思った。
自分で決めました。ただ、それだけが言えたらいいことにしようと思ったのだった。

 

  ( 日経  文化 より ただ、納得できるよう )