しばらく前、ミュンヘンオリンピックの競泳平泳ぎで金メダルを取った田口信教さんの講演を聞いた。
冒頭で平泳ぎを始めた頃に監督から教わった一言を紹介された。

  「スポーツはいくらカンニングしてもいいんだ」とおしゃったという。
定期試験や入学試験で他の人の回答を盗み見て自分の解答用紙に。

  書き写すカンニングが良くないことは誰でも知っている。
しかしスポーツの世界では、トップアスリートのパフォーマンスを盗み見て真似ても問題ないという。

  なるほどと思い、トップの選手の平泳ぎをよく観察すると。
自分が思い込んでいたのとは違う動きをしている。

  平泳ぎは手を水平に開くと思っていたが、むしろ縦方向に動かしている。
動きをまねて練習するうちに、成績が上がっていった。もちろん生半可な練習ではない。

  血の汗を出すような厳しい練習を積み重ねたという。
田口さんの教えは、単にスポーツだけの話ではない。

  私たちが生きていく中で前向きに生きていくためにも役に立つ。
私たちは、人生で苦しい思いをしたときについ一人で頑張ろうとし過ぎる傾向があるが。

  少し立ち止まり周りを見回してみてはどうだろう。
ストレスを上手に生かしている人をカンニングしてみると。
自分のストレスに対処するコツが見えてくるだろう。
 

    (  日経  こころの健康学 より )