一方の石川は今年でも9日の阪神戦で勝ち、プロ入りから24年連続勝利という前人未到の記録を作った。
体格には恵まれなかったが、一年また一年と枝葉を伸ばし、今や球界の大樹として。

   菅野ら他球団の仲間にも優しい木陰を与えている。
あとを追う投手にとって、その投球自体はたぶん参考になりはしない。

   制球は何とかなるかもしれないが、球威を補う駆け引きと度胸。
それらは天分に近く、、マネできるものではない、。

   後輩の道しるべになるとすれば、人生との向き合い方か。まずは負けん気。
キャンプのダッシュでも、必ず胸一つ、同走者の前に出てゴールしていたものだ。

   腐らずに粘る。これもまた、石川の真骨頂だ。
自分の送球ミスから3失点しながら、逆転を待った9日の投球が、その粘りを象徴するかのようだった。

   ほとほと自分がいやになりそうな展開でも、持ち直し、ゼロを重ねた。
勝ちの権利が転がり込んだ味方の得点に、相手失策がからんだ。

   ラッキーといえばラッキーだが、あれがまさに人生というものではないか。
運不運は必ずある。これまでの負け試合には打ち取った当たりが。

   内野の間を抜けて、というものも少なくなかっただろう。
運に惑わず、腐らず、ベストを尽くしてきたところに、通算187勝189敗という数字が刻まれている。

            (  日経  逆風順風より  「くじけず歩み続けた勲章」 )