「どうすればいいんや」。
藁をもすがる気持ちで、思い切って成功体験のある過去の戦術をすべて捨てることにした。

   選手一人一人のアメフトの実力は決して高くなかったが、野球やサッカーの経験者が多かった。
「足が速い」「体力がある」「体格に恵まれている」といった各選手の特性を見極め。

   各人の力を最大限の引き出せるポジションにつかせた。
さらに、能力を生かす基本動作や戦術を徹底的に反復練習させた。

   潮目が変わったのは秋リーグの初戦。相手の大阪体育大学は1部リーグの常連で格上だ。
負けたものの、17対18と番狂わせの善戦を演じた。

   「強豪校にも通じる。これはいける」。3連勝し、1部リーグ残留を決めた。
部員が歓喜する中、重責から解放されグランドで「体重が半分くらい軽くなった」感覚が今も忘れられない。

   「現状に文句を言ってもしょうがない。自分たちが持っている資源を徹底的に伸ばす。
小さくてもいいから勝ち筋を作るしかない」。

   苦境も前向きにくきょうもまえむきのち捉え、突破口を探る。
アメフトを通じて学んだ姿勢は人生の軸となり、後ぬに経営者としての指針ともなった。

   ( 日経  Mystory より 細見 研介  ファミリーマート社長 )