坂井らと同じく、モデルはいない、と言い切った選手がかつていた。
名電高(現愛工大名電高)から西部に入る時の工藤公康氏だ。

   「目標とする選手はいません。それをつくると、その人にだんだん似てきて。
結局は、その選手以上になれませんから」。

   これが18歳の言葉か、と驚くのだが、そのくらいの自己を持たないと、プロで生き残れないし。
工藤氏のような唯一無二の存在になれっこない、ということだ。

   自分は自分。そう自覚する今の選手たちには余計なお世話、と承知しつつ、先輩の言葉もう一つ。
「年々プロっぽくなってきたかな」。西武栗山巧(41)が24年目の契約を交わして語ったものだ。

   出番が減る中でも、代打逆転2ランの鋭い読みを発揮した。
集中力、勝負勘がますます研ぎ澄まされてきたのでは、と問うと、この答え。

   どう勝負手を打つか、駆け引きというものが、おぼろげながらも見えてきて。
プロっぽくなった、ということらしい。

   プロに入っただけでプロになるのではない。
全球団の新人が覚えておいて損はないと思う。

   ( 日経 逆風順風 より 「プロがプロになるとき」 )