その人は国語の教員で、授業中に絵本の読み聞かせをした時の体験を報告してくれた。
途中までスムーズに読めたが、クライマックスのところでどもって読み進められなくなったという。
生徒たちはざわつき、その人は惨めな気持ちになって「こんなことをしなければよかった」と考えたという。

  辛そうだったので、その気持ちに共感しながら。
「なぜ国語の教師になり読み聞かせをしようと考えたのか」を尋ねた。
するとその人は「吃音に苦しむなかで言葉の美しさを感じるようになり。
それを伝えたいと考えたからだ」と語った。

  あらためて読み聞かせの現場の話を聞くと、教室は騒がしくなったが。
言葉について考える雰囲気が生まれていた。
スムーズに読み進められなかったとしても「言葉について考えてほしい」という。
最も大切な思いが、子どもそれを伝えに届いていたことがわかりうれしくなった。
        (  日経  こころの健康学 より )