「若くして逝った戦友たちの無念を考えると、忸怩たる思いに日々さいなまれました。
転機は戦後まもなくです。進駐軍が裏千家に押しかけてきました。

  家元だった父は端然としてお茶をふるまいます。
なかには横柄な兵隊もいて、父はそういう手合いを英語で『ここは礼儀正しさをわきまえるべき部屋。
お引き取りを』とたしなめたのです。自分には目が覚めるような経験でした」。

  「戦勝国のおごり、敗戦国の屈辱をならすのが平和の第一歩。
それには異文化の尊重が欠かせません。茶道はそのきっかけづくりを提供できるのでは・・・。
茶道の家に生まれながら、世界に通用しうる普遍的価値を、それまで意識しいませんでした」。

  (  日経 人生100年の羅針盤 より  千 玄室 裏千家前家元 )