「テレビを見たら柔道の女子選手が戦っていた。
彼女たちがオリンピックで負けたときに味わう感情がどれほどのものなのか。
負けた選手が打ちひしがれる姿を見てオリンピックがどういうものかがわかった。
彼女たちにとって国を代表すること、メダルに挑み、勝ち取ることがどれほど大切なことなのかをね」

     それがつまり阿部のことだった。

   「その瞬間を見るのはとても感動的だ」
ほとんどのゴルファーは子どもの頃からメジャー大会で勝つことを夢見てプレーしてきている。
デイも同じ。加えてオリンピックのゴルフは賞金も出ない。それは普段とはまったく異なる環境での戦いだ。
では、何を目指すのか。それを教えてくれたのが阿部の姿だった。

   「アスリートが敗北を乗り越えようとする、初めての勝利をつかもうとする。
初めてのメダルを勝ち取ろうとする。その瞬間を見るのはとても感動的だ。
だからオリンピックに対する自分の見方が変わったのは間違いない。
今週ここで戦えることにとても感謝している」

   オリンピックの舞台に立つことの意味。
阿部の慟哭には酸いも甘いも経験してきたトップゴルファーの心でさえ揺さぶるものがあった。

   ( Number   Web より)