「ねないこ だれだ」のせなけいこさんに「いじわる」という作品がある。
せっかくの雪だるまをとかしたくない男の子が、太陽に「あっちいけ」という。

   腹を立てた太陽は熱い風を浴びせる。男の子もやり返す。
応酬のうちにいじわるはどんどん周囲へと広がっていく。

   ベトナム戦争を契機に生まれた一遍という。
なぜ絵本を描くのか。お説教や、親が喜ぶしつけの話をするつもりはない。

   ただ「これは自分なんだと、子供が思ってくれるような作品を作りたい」。
せなさんは自伝でそう説いている。

   子供目線だからこそ、私たちは自らに重ねつつ夢中でせなさんの本を読んできたのだろう。

     ( 日経 春秋 より  )