子が5歳になった1983年、その店が閉まると聞いた。
残業続きの夫はちょうど会社を辞めたいという。

   一念発起、脱サラした夫と店を継いだ。ところがびっくり、本は全然売れない。
夫の退職金はあっという間に飛んでいく。ふびんに思った出版社の営業の人が助言をくれた。

   「本屋さんは種まきをしないと」。仲間を作らなきゃ。
お母さんや幼稚園・保育園の先生を集めて絵本の勉強会を始めた。88年の店を移転後もずっと続く。

   あるとき「ちいさいおうち」のバージニア・リー・バートンらの展覧会が。
主要都市を巡回すると聞きつけた。

   高崎にも予ぼうと会が立ち上がった。
ちょうど文化施設の高崎シティーギャラリーも開館していた・。開催費用は350万円。

チケットを皆で売り歩くしかない。だが私は、人さまからお金をもらいうことに後ろめたさがあった。
背中を押してくれたのは、福音館書店の会長だった松井尚さんにいわれた言葉だ。

   「もうかったら、また文化にお金を使って育てればよいじゃない」。
私たちの売り文句は決まった「文化を買ってください」。

     ( 日経  文化 より 「みんなでつむぐ絵本画展」 )