「パターソン」の主人公は路線バスの運転手である。時間通り型通り繰り返す日々。
毎夜犬の散歩がてらバーに立ち寄り、1杯だけビールを飲む。

  それ以外に、詩を画くという人生の喜びがある。読者は今のところ妻だけ、それで十分。
心あふれる言葉をペンでノートにつづる。詩を通ししてありふれた日常が輝く。

  そして公開中の「パーフェクト・デイズ」。
役所広司扮するトイレ清掃員は世間的には貧しく孤独なのだろう。

  でも好きなロックのカセットを聞きながら運転し、就寝前にW・フォークナーや幸田文の本を。
読む時の表情は満ち足りている。内面の生活さえ豊かならば人は幸福でいられる。
老いも一人も恐れることはない。

   (  日経  春秋 より  )