近年、オフになると断食をした。数日間、口にするのは水と酵素ドリンクのみ。
空腹から体の弱い部分が発するシグナルに意識を向けて鍛えたことが。
良質なコンディションの維持と45歳までのプレーにつながった。

  きっかけは米大リーグから日本に戻った2013年の膝の手術。
当時在籍した阪神の後輩で、けがに強い鳥谷敬に日ごろの取り組みを聞くと。
年に1度、断食をしているという。「じゃあ、自分も一回やってみよう」

  他者のやり方や助言を「自分とは違う」と頭ごなしに否定しないことを心掛けてきた。
まずやってみて、合うか合わないかを判断する。
どこに成功の鍵が隠れているかわからないという考えのベースには、若いころの経験がある。

日本生命から中日入りした1999年、打率2割8分4厘をマークした。だが2,3年目は2割5分台と低迷。
打撃に迷いが生じていた。4年目を迎えるにあたり、2つのことを決意した。
まずは「今までの自分を捨てる」。そして、新任の佐々木恭介打撃コーチの言うことを「100%信じる」。

秋季キャンプから二人三脚で歩み、構えやタイミングの取り方などあらゆるものを変えた。
朝から晩までバットを振り、「これでだめだったらプロ野球選手としては終わるだろう」と。
覚悟して臨んだ2002年、3割4分3厘で首位打者に。
この年限りで大リーグに渡った巨人・松井秀喜の三冠王を阻止したことは揺るぎない自身を植え付けた。
(  日経   引退模様より  福留孝介 )