菊竹さんのもとで、僕は身体的にものを作る姿勢を教えられた。
言葉で説明するのは難しいのだが、菊竹さんがつくる建築は、コンクリートにまで。
菊竹さんのアイデアが染み込んでいる気がする。

  実施設計まで進んだプロジェクトであっても、しっくりこなければ白紙に戻す。
すでに建設が進んでいた建物に菊竹さんが不満げなので、担当の遠藤勝勧さんが。
ゼネコンに内緒で夜中に梁を壊しにいったという伝説も残る。
論客ではあるが、論理や理性だけで建築をつくり上げることはしない。
まるで建築の内部に身体ごと入り込んで設計するその手法は、若い僕の体に染み込んだ。
      (  日経  私の履歴書 より  伊東豊雄 建築家  )