石川さんに何よりも励まされたのは、シアター・ォリンピクスの開催時の挨拶である。
石川さんは次のような内容のことを述べた。

   富士山は、激しく噴火したから、日本一の高い山になった。
しかし、ずっと噴火し続けたわけではない。

   激しく爆発が続けば、周囲が焼け焦げるだけである。
富士山は、長い間少しずつ溶岩を流し続けたので、裾野の美しいし姿になり、日本人を励ますことができた。

   このシアター・ォリンピクスを契機とした静岡県の文化事業も激しく爆発し過ぎだと思う。
人たちもいるだろうが、長く続けた裾野の美しいものにしたいと思っている。
皆さんのご協力をよろしくお願いしたい。

   この挨拶に、私は大きな文化事業を実行するときの政治家の決意と苦労を思った。
この言葉は今でも私の頭の中に、私の故郷の富士山の姿とともに残っている。

     ( 日経  私の履歴書 より  鈴木忠志  演出家 )