私は米ゲーム子会社時代の相棒、アンディ・ハウスがよく言っていたことを思い出した。
「ネガティブな情報こそすぐ公開すべきだ。小出しではなく可能な範囲ですべて。

   分からないことは分からないと言う」。元候補マンのアンディらしい主張だった。
ソニーを揺るがす事態を前に一刻の猶予も許されない。

   私はニューヨークにいる会長兼CEO(最高経営責任者)のハワード・ストリンガーに電話した。
ハワードもこの段階で謝罪会見はすべきでないとの考えだった。

   「日本には日本の文化がある。自分たちも被害者なんて言っても伝わらない。
まずは頭を下げて謝罪すべきだ。それをやらないと会社が終わることだってありえるんだ」。

   こうして私が東京で記者会見を開くことになった。
「ユーザーの皆様には多大なふ不安とご迷惑をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます」。

   冒頭でこう言って頭を下げた。
最初に謝罪すべきは、迷惑をかけたお客様に対してであるべきだと考えた。

       ( 日経  私の履歴書 より  平井 一夫  ソニー元社長 )